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スタンフォードの自分を変える教室 ケリー・マクゴニガル 神崎朗子 訳









恐怖管理戦略によって、私たちは逃れられない死から目をそらすことはできるかもしれません。しかし、誘惑に負けて快楽を味わっていたら、かえって死に急ぐことになりかねません。

2009年のある実験によれば、死亡の危険性をうたうタバコの警告表示は、喫煙者にストレスや恐怖を与えることがわかりました。公衆衛生局の狙い通りです。

けれども残念なことに、不安にかられた喫煙者たちが頼ったのはお決まりのストレス解消法、すなわち喫煙でした。

何ということでしょうか。おかしな話しですが、ストレスが脳にどんな影響を及ぼすのかを考えれば納得できます。ストレスによって欲求が生まれ、タバコをひと目見るだけでドーパミン神経細胞が異常に刺激されてしまうのです。

もちろん、喫煙者はタバコの箱をにらむようにして警告メッセージを読みますが、そんなものは役に立ちません。喫煙者の脳が「警告、タバコはガンの原因になります」というメッセージを認識し、自分の死に向きあったとしても、脳のどこからか叫び声が聞こえてきます。「心配ご無用、タバコを吸えば気分がよくなるよ!」

世界的に見ても、タバコの警告表示に腫瘍や遺体の絵や画像を取り入れる傾向が高まっています。はたしてこれがよい方法なのかはわかりません。恐怖管理理論にしたがって考えれば、画像が恐ろしいものになればなるほど、喫煙者は不安を打ち消すためにますますタバコを吸いたくなるでしょう。

しかし、これから喫煙者になるのを防いだり、禁煙の決意を固めたりするのにはかなり効果的かもしれません。このような新しい警告表示に喫煙量を減らす効果があるかどうか、確かなことはまだわかりませんが、思わぬ結果を招くかも知れない可能性も注視していく必要があるでしょう。